年収1000万円と聞くと
- 夫や妻どちらかは専業主婦(主夫)
- 子どもは塾に通って、小中から私立へ
- 大きなマイホームを建て、車も高級なものに乗っている
- ランチやディナーはホテルで食べている
- 好きなものを食べ、好きなものを買える
このようなイメージを持っている人もいるかもしれません。
私自身も、今から約5年くらい前まではそう思っていました。
子どもの頃は「年収1000万稼いで親孝行するんだ」などと目標を立てていた記憶があります。
ただし、お金の考え方、税金や手取り金額などを勉強して、自分自身も確定申告で実務を経験するなかで、思い描いていたイメージは幻想に過ぎないと痛感しました。
もちろん、年収1000万円稼ぐことはすごいことです。
2019年に国税庁が公表した資料では、年収1000万円以上の会社員は全体のわずか5%です(『平成30年(2018年)分民間給与実態統計調査」国税庁』)
ただし、彼らがお金持ちかと言われたら、実際は全然そうではないのです。
年収1000万円の手取りっていくら?
まず、年収は手取り金額ではありません。税金や社会保険料、各種控除が引かれる前の金額です。
そのため、実際に手にする、使えるお金(手取り金額、可処分所得ともいわれる)は1000万円ではありません。
では、年収1000万円の人はどのくらいの手取りを得ているのか。
独身か既婚か、仕事の有無、子どもの有無、年齢など、人それぞれ状況が全然違うので一概にはいえませんが、税金(所得税や住民税)、社会保険料(厚生年金、健康保険、雇用保険など)を引くと、年収1000万円の人の手取りは約700万円ともいわれています。
月ベースにすると約55〜60万円ですね。
夫婦共働きで合計1000万円の場合は、もう少し増えて約770万円(月ベースで約65万円)です。
夫や妻が一人で年収1000万円稼ぐ世帯よりも、共働き合計で1000万円のほうが、税制の仕組み上、手取りは多くなります。
意外に少ないと思われた人も多いと思いますが、日本の税制は累進課税制度のため、収入が増えるほど税金も上がっていきます。
ただ税金があがるだけでも厳しいですが、それだけでなく、年収1000万円以上だからといった理由で各種手当や行政の支援制度が受けられなくなるケースが増えてきます。
各種手当てや支援打ち切り
よく例として挙げられるのが児童手当です。
中学校卒業までの児童を養育している世帯には自治体から児童手当が支給されますが、この制度には所得制限が設けられています。基本的な支給額は、0~3歳未満の児童は1人につき月額1万5000円、中学生までは基本的に1人あたり月額1万円です。
ところが、児童1人を扶養している世帯に年収875万6000円(所得額660万円)以上の人がいると制度の対象外になり、児童1人につき月額5000円の特例給付のみが支給されます。
「児童手当Q&A Q1.児童手当の支給額はいくらですか?」内閣府
「児童手当制度について」宮城県年収1000万円を1人で稼ぐ世帯には児童手当が年間6万円しか支給されませんが、夫婦で年収500万円ずつ稼ぐ世帯に小・中学生がいれば1人あたり年間12万円が支給されることになります。児童手当を考慮した場合、中学生が1人いる世帯の手取りは下記のようになります。
・年収1000万円×1人の世帯・・・約739万円
・年収500万円×2人の世帯・・・約785万円
夫婦で年収1000万円を稼ぐ世帯のほうが46万円ほどお得、という計算になります。
引用元:https://limo.media/articles/-/18613
このように、実際は様々な手当てや支援が打ち切られ、そのうえ税金も多く納めることになる。
とりやすいところからとる・・
年収1000万円以上の人が「狙いうち」されているのが現状です。
理想と現実のギャップ
「年収1000万円はお金持ち」
このように考えている人は多い一方で、実際に1000万円以上稼げるようになっても、今度は理想と現実のギャップに驚くことになります。
ギャップに苦しみ「生活が苦しい」「貯金ができない」ケースは少なくありません。
周りに相談したくても、「年収1000万円はお金持ち」というイメージが強く、「お金あるんでしょ?そんな贅沢なこと言っちゃって、嫌味なの?」などと叩かれるリスクがある。
これでますます悩みが増えてしまう悪循環。
そして金銭的、時間的、精神的余裕がますますなくなって、本人や家庭の環境もギクシャクし、最悪離婚等に至るケースもあります。
年収1000万円はお金持ちというのは幻想ということに気づき、お金の考え方を学び続けるのは自分や自分の周りの大切な人を守るためにも必須だなと改めて感じます。