考え方

つみたてNISAの解約率から学ぶ問題点

一般NISA、つみたてNISAといったサービスを使って投資を始める人も増えていますが、その一方で、稼働を止める人、解約する人がいるのも事実です。では、なぜ休眠口座や解約率が上がるのか。それらが浮き彫りにする問題点、学ぶものとは?

今回の記事のポイント
  • NISAの非稼働口座数、解約率の状況
  • 解約する理由とは?
  • 非稼働口座数、解約率の状況が浮き彫りにする問題点
  • つみたてNISAの解約率から学ぶもの
注意

本記事は、つみたてNISA等、特定の金融商品を推奨したり斡旋、否定するものでは全然ありません。

非稼働口座数、解約率の状況

金融庁が6月30日に発表した「NISA口座の利用状況調査(2019年12月末時点)」で、つみたてNISA口座で19年末までに開設された約190万口座の4割超で19年に1度も買付されることがなかったことがわかった。せっかく、資産形成に興味を持って口座開設はしたものの、一度も投資されることなく口座が廃止になる場合もある。また、投資を開始したものの、1年もたたずに解約してしまう人も少なくない。国内の投資人口のすそ野拡大をめざして18年1月にスタートした制度だが、つみたてNISAの定着や拡大には、その入り口の段階で早くも大きな課題が突き付けられた格好だ。

つみたてNISAの口座で、19年1月1日から12月31日までに1度も買付けがなかった口座数は80.45万口座。全体の約190万口座の42.34%を占める。20歳代、30歳代という若い世代で未買付口座が目立ち、20代は約30万口座の47.11%、30代は約48万口座の48.01%で一度も買付けがなかった。

※引用元:モーニングスター記事(https://www.morningstar.co.jp/market/2020/0706/fund_00894.html)

NISA口座を開設したものの

  • 全体の40%は一度も買付されていない(稼働実績がない)
  • 1年もたずに解約する人が多い
  • 稼働実績なしは若年層で目立つ
  • 短期間で売却する人が多い

このような事例が多い現状が浮き彫りになっています。

解約する理由は?

せっかく投資を始めようと思って、口座開設したにもかかわらず、全体の40%以上は稼働実績がなく、稼働があっても短期間で売却して解約する人が多いのはなぜか。

  • 周りに言われて渋々口座開設だけ行った
  • なんとなく口座作ったけど、その先のやり方が分からないから放置している
  • そもそも投資に使うお金(元手資金)がない
  • 口座開設した時はお金あったけど、その後生活費に必要だったので解約した
  • すぐに儲かると思っていたのに結果が出ないから
  • 儲かると思っていたのに今年の成績がマイナスだったから
  • (2019年に)株価が右肩上がりで収益がプラスになったから

様々な理由が考えられます。

例えば2019年は株価も右肩上がりで景気が良い傾向が続いたため、成績が良く収益もプラスになっている今のうちに利益確定させておこうと考えた人が多いと思われます。

株価が右肩上がりだから、毎月コツコツ投資するより、お金ある人はドカンと投資したほうがよくない?ということで、一括投資方式に切り替えた人もいるかもしれません。

確かに景気が良い時はそのように考えがちです。このまま好調な状態が永遠に続くのではないか・・といった錯覚に陥りやすいですね。

ただし、実際はどうか。

2020年に入ると、新型ウイルス騒動が起こり、今までの常識、当たり前、日常生活全てがひっくり返されたといわれても不思議ではない状態になりました。

2020年3月には株価も大幅に下落し、一時は一体どこまで下がるのか、一括投資してしまった人は特にヒヤヒヤしたと思います。その後も政情不安などもあって、相場は不安定な状態が続いていますね。

このように投資の世界も、良い時もあれば悪い時(我慢の時)もあります。

上下の波があるからこそ、一喜一憂せずに毎月コツコツ、淡々と積み上げていこうというのが、本来の「つみたて投資」の考え方です。専門用語では「ドルコスト平均法」といいます。

非稼働口座数、解約率の状況が浮き彫りにする問題点

当ブログでも繰り返し

日本では子どもの頃から基本的なお金の考え方、金融(マネー)リテラシーを学ぶ機会や場所がほとんどない。だからこそ、積極的に、能動的に学んでいく必要がある

と発信しています。

NISAが良いのか悪いのかといった話は別にして、(本記事終盤の参考記事にNISAのメリットデメリットを解説した記事を載せていますので、ぜひチェックしてみてください)

NISA口座の非稼働口座数、解約率の状況をみて、改めて「日本人の金融リテラシーが低い状況」が浮き彫りになったと思っています。

冒頭で引用した記事でも

積立投資の魅力は、投信など値動きのある金融商品を毎月一定の金額で購入し続けることで、価格変動リスクを抑える「ドルコスト平均法」の効果が得られるところにある。5年、10年と継続して積立投資を行うことによって、その間に・・・大幅な価格下落があったとしても、最終的には投資収益に結びつけていくという考え方だ。つみたてNISAを始めても、1年も経たずに売却してしまえば、積立投資のメリットを受けにくくなってしまう。

このように説明されている通り、積立投資をする場合は、長期でコツコツ運用するのが大前提です。短期で売買を繰り返すものではありません。

個別株の短期売買、デイトレード等とは切り離して考える必要があります。

1年2年の成績ではなく、最低でも10年以上、20年30年以上と、長期計画を持ってコツコツ運用するものです。

  • 投資に絶対はなく、含み損を抱えるのは当たり前
  • 良い時もあれば悪い時(我慢の時)もある
  • 状況や情報に一喜一憂すると、かえって身を滅ぼす
  • 長期投資は複利を最大限に活用してナンボ

このような考え方がベースにありますが、学ぶ、教わる機会がないので、1年2年、もっといえば数ヶ月単位の成績で判断して一喜一憂してしまう、成績が悪化すると途中で怖くなって解約してしまう、そして結果的に大損する人がかなり多い。

つみたてNISAの解約率から学ぶもの

単利と複利はよく比較されますが、両者は10年めまでは正直ほとんど差がありません。

複利の効果が発揮され始めるのは10年め以降、本領発揮し始めるのは20年め以降です。そして期間が長くなればなるほど差は大きくなっていきます。

本来なら、このような内容も義務教育などから勉強する、教えるべきだと思いますが、日本には本当の意味での金融教育が全然ない。

そのため、積立投資の趣旨を把握しないまま、なんとなく始めて、10年20年・・どころか1年2年も我慢できずに、売却や解約をしてしまう人が多いのです。

このように今回は、つみたてNISAの解約率を例に挙げて、複利の考え方が抜けていること等を説明しましたが、まだまだたくさんあります。

お金増やすぞ〜と意気込んで、個別案件にすぐ飛びつきたくなる気持ちも分かります。

ただし、まずは、お金の考え方、金融(マネー)リテラシーを高める必要がある。

その重要性を、自分自身改めて痛感したデータでした。

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